|
クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」が本日12月9日世界に先駆けて日本で封切られたので観てまいりました。折しも昨日12月8日は旧日本軍による真珠湾攻撃から65年目にあたります。悲惨な戦争体験が世代の交代と共にどんどん風化して忘れ去られようとしているだけに、封切り初日の観客席を見まわすと約70%は60才〜70才台の高齢者が占めていたことがちょっと残念でありました。もっと大勢の若い世代の人達にたくさん観ていただき、戦争とはどういうものなのかを真正面から真剣に考えてもらう良い映画であると思います。 この映画は先に公開されている映画「父親たちの星条旗」がアメリカ側から見た約7,000人の米兵が戦死した硫黄島の激戦ぶりを描いているのに対して、日本側から見た渡辺謙、演じる栗林忠道中将の指揮の下20,000人も日本兵が玉砕するまでの壮絶な戦いぶりを描いた二面性を持つ硫黄島二部作として話題のものであります。 主人公の栗林中将はもともと開戦前はアメリカ留学をしてカナダ公使館付武官でもあったため、西欧社会を良く知る親米派で「日本はアメリカとは戦うべきではない」との自論を持っていた人のようです。映画のシーンの中にも出てきますが彼の日本への帰国時の白人武官達による送別パーテイーで親しい白人夫妻から「もし日米が戦うことになったらどうしますか」と問われ、「その時は当然自分は軍人であるから国のために戦うことになる。」ときっぱりと答えます。この部分が正に今回の硫黄島二部作の主テーマで、お互いの国や愛する家族を護る為に生死を賭けて戦うという戦争のやりきれなさを強調していると思います。 約2時間半のこの映画のほとんどのシーンは、米軍の圧倒的な艦隊、空軍、火力や兵力により「5日間もあれば硫黄島は陥落するであろう。」と言われていたものが栗林中将の名戦法の指揮により36日間もてこずらせた日本軍の壮絶な戦いぶりの内情を描いたものであります。栗林中将はこのサイパンと日本本土の丁度中間に位置する硫黄島がアメリカ側に渡れば、ここを拠点として米軍は日本本土を一気に壊滅できる立場になるため、潔く自決玉砕を急ぐ守旧派幹部を押さえて「1日でも2日でも陥落を伸ばして戦うことが日本本土の銃後の家族達の命を1日でも2日でも永らえさせることになる。」と部隊の士気を鼓舞する場面が出てきます。ここにアメリカ側から見てさんざんてこずらせたあっぱれな栗林中将以下の軍人達の魂をこの映画の重要な見せ場になっています。 徹底抗戦した地下要塞の中で「天皇陛下万歳!」をみなで叫ぶシーンが出てきますが、恐らくは今の日本の若者達から見ればその違和感から「無茶苦茶な軍部から開放されて、あ〜あ、日本は負けて民主主義と経済的繁栄を今日謳歌できて本当に良かった!」と実感する人の方が多いと思われます。そんなことをこの硫黄島で玉砕した20,000人もの兵隊達が耳にしたらいったい彼等は何のために1日でも2日でも伸ばすために壮絶な戦闘をしたのか魂は浮かばれないことになります。戦争という事態に直面した場合のやりきれなさを真正面から受け止め、深く考える必要があります。すべての戦争は故郷を、家族を、守ることを大義としています。 戦争と災害は忘れた頃に必ずやってきます。歴史は繰り返えしていますのでそのことを嫌がおうでも証明しています。日本史の中だけでもそれらは無数に見られます。多数のご先祖様の犠牲の上にたって民族の統一と繁栄が出現し、荒廃して戦乱となっては、また統一し安寧と繁栄の時代の繰り返しであります。だからと言ってそれは仕方が無いことでは決して済まされません。少なくとも少しづつは世の中はそれを乗り越えるだけの進化をとげて叡智が蓄積されています。またそうであらねばなりません。そのことを肝に命じて本当に大事と思ったことを次ぎの世代に引き継がせて行けば後世必ず理解され、より良い社会が実現できると思います。 この映画に携わった監督、出演者、スタッフ全員がそのことを訴えるために全力を尽くしていることが理解でき、さすがにアメリカのアカデミー賞の前哨戦でもあるアメリカ映画批評会議賞を受賞した良い作品であると思いました。 |
| << 前記事(2006/11/11) | トップへ | 後記事(2007/01/01)>> |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
寛人さん、久々の力溢れるブログとても嬉しいです。戦争は銃後の家族を故郷を守るということもありましょうが、洗脳という部分も見逃してはならないと思います。若者達をある意図をもって洗脳するのはいとも容易いことであるのは、いろいろな事から容易に想像出来ます。 |
愛 2006/12/11 07:43 |
でも、ほとんどは洗脳されてしまって、すっかりその気にならされていたとも言うのです。ほんの15や16の男の子達には大変な所だったと聞きました。その方は前列、後列のいろんなところをくぐり抜けて今生きていますが、そのお話はもし我が息子だったらと思うと、親としてあまりに苦しいです。日米両方の立場から描いた映画はとても興味深く、意義のあることだと思いました。寛人さんの久々の文章素晴らしかったです。ありがとうございました。 |
愛 2006/12/11 07:44 |
愛さま |
寛人 2006/12/13 03:28 |
| << 前記事(2006/11/11) | トップへ | 後記事(2007/01/01)>> |